外部事務長
見えていない支出と手戻りを、数字にして見る
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この記事の結論
医院でいちばん見えにくい支出は、費目として帳簿に並ばない「やり直しにかかった時間」です。件数と時間を 1 か月分だけ数え、時間あたりの人件費を掛けて金額に直すと、どこから手をつけるかが決まります。
経費の見直しというと、材料費や委託費、リースの契約条件を見ることが多いと思います。これらは金額が数字として出ているので、比較も判断もできます。
一方で、金額としてどこにも出てこない支出があります。やり直しと、待ち時間と、確認のためのやり取りにかかっている時間です。 人件費の中に溶けているので費目としては見えませんが、実際には毎月そこに時間が使われています。
訪問歯科で起きやすい手戻り
現場に入って業務を追いかけると、時間が消えている場所はだいたい決まっています。訪問歯科では次のような形で出てくることが多いです。
- 訪問した日に患者さんが受診できず、往復の移動だけで終わる
- 同意書や必要書類が揃っておらず、後日あらためて持参する
- 報告書の様式が施設ごとに違い、作り直しが発生する
- 訪問日時の変更が院内に伝わっておらず、施設と院内で連絡を往復する
- レセプトの返戻対応で、カルテと記録を照合し直す
どれも「たまに起きること」として処理されがちです。ただ、一度に失う時間が 30 分から 1 時間程度あり、それが月に何回か続くと、無視できない量になります。
1 か月だけ、件数と時間を数える
いきなり改善案を考える前に、数える期間を決めます。おすすめは 1 か月です。長く取ると記録自体が続きません。
記録するのは 3 項目だけにします。何が起きたか / かかった時間 / 関わった人数。 用紙 1 枚でも、共有のスプレッドシート 1 つでも構いません。詳しく書かせようとすると記録が止まるので、1 行 10 秒で書ける形にしてください。
1 か月分たまったら、種類ごとにまとめます。ここで初めて、どの手戻りが何回起きているかが見えます。 院長の体感と実際の順位がずれることが多い部分だと感じています。
時間を金額に置き換える
件数と時間が出たら、自院の数字で金額に直します。使うのは、その業務に関わったスタッフの時間あたりの人件費です。
給与に加えて、社会保険料の事業主負担分を含めた額を、その人の月間の所定労働時間で割ります。 訪問に関わる場合は、車両の燃料費と、移動そのものにかかった時間も一緒に見てください。
あとは「1 回あたりの時間 × 関わった人数 × 時間あたり人件費 × 月間の発生回数」で、その手戻りの月額が出ます。 ここで出る金額は概算ですが、判断には十分です。削るかどうかを決めるための数字であって、決算のための数字ではありません。
着手する順番は、頻度 × 時間で決める
金額が出たら、大きいものから 1 つか 2 つだけ選びます。全部を同時に直そうとすると現場が疲れて止まります。
経験上、上位に来るのは「様式が揃っていないことによる作り直し」と「情報が一方向にしか流れていないことによる連絡の往復」です。 どちらも、新しい道具を入れる前に、様式を 1 つに決める・情報の置き場所を 1 か所にする、という整理で減ります。
設備やシステムの導入を検討するのは、この整理をやったあとのほうが判断しやすくなります。 何がどれだけ減るのかが金額で言えるので、導入費用と比較できるためです。
施設側の手間も、いずれ自院に返ってくる
自院の中だけでなく、施設側にかかっている手間も見ておく価値があります。 報告書が読みにくい、連絡の窓口が分かりにくい、といった状態は、施設の職員に確認の手間をかけています。
その手間は請求書には出てきませんが、施設側が新しい入居者の対応を検討するときの判断には影響します。 施設の職員が院内で説明しやすい資料を渡しておくことは、営業活動というより、相手の手戻りを減らす作業だと考えています。
まとめ
- 見えにくい支出は、費目にならない「やり直しの時間」に出る
- 1 か月だけ、何が起きたか / かかった時間 / 関わった人数の 3 項目を記録する
- 時間あたりの人件費を掛けて、手戻りごとの月額を概算する
- 金額の大きいものから 1 〜 2 件に絞って着手する
- 道具の導入は、様式と置き場所を揃えたあとに検討する
記録の項目や、時間あたり人件費の置き方は、医院の規模と訪問件数によって変わります。 1 か月の記録の設計から、集計、着手順の決定まで一緒に進める形をご希望であれば、外部事務長の関わり方をご覧ください。
