医院運営
スタッフに役割を渡す。元小学校教員が現場で使っている「係活動」の考え方
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この記事の結論
役割を渡すこと自体より、渡し方を決めていないことが負担になります。何をどこまで任せるのか、期限はいつか、どこで報告するのか。この 4 点を先に決めてから渡してください。
スタッフ教育というと、手技や知識の研修を思い浮かべる院長が多いと思います。それは必要な投資です。 ただ、研修を増やしても院内の空気が変わらない、という相談を受けることがあります。
私は歯科の事務局に入る前、小学校の教員をしていました。 学校現場でクラスをまとめるときに使っていた考え方のうち、医院でもそのまま使えるものが一つあります。係活動です。
小学校の「係活動」でやっていたこと
小学校では、授業とは別に、児童一人ひとりが何らかの係を持ちます。 教員の側から見ると、これは仕事を分担させるための仕組みではありません。授業だけでは出番のない子に、出番をつくるための仕組みです。
係活動でうまくいくかどうかは、担当を決めた後の設計で決まります。実際に運用していたときに気をつけていたのは次の点です。
- 何をする係なのかを、一言で説明できる状態にする
- 本人が決めていいことと、先に相談してほしいことを分ける
- 1 学期など、期限を区切る
- やったことを見せる場(朝の会など)を用意する
この 4 点が抜けたまま「あなたはこれね」と渡すと、係は形だけ残って動かなくなります。学校でも医院でも、ここは同じだと感じています。
医院に置き換えると
診療は「やらなければならない業務」です。その外側に、自分で進め方を決められる小さな担当を用意します。医院で実際に置かれることが多いのは、こうしたものです。
- 器材と在庫の担当(発注のタイミングと定数を決める)
- 新しく入ったスタッフの相談役
- 院内の掲示物や、患者さんに渡す説明資料の担当
- 訪問の持ち物リストと、戻ってからの片づけ手順の担当
- 施設に出す報告書の書式を整える担当
重要なのは、これらが「余分な仕事」ではなく「その人が決めていい領域」になっていることです。 院長が最終的に全部決め直してしまうと、担当は名前だけになります。
渡すときに決める 4 点
役割を渡す場面で、口頭で「お願いします」だけ伝えて終わりにすると、後から負担の感じ方がずれます。次の 4 点を、渡すときに一緒に決めてください。
- 範囲:どこまでがその担当の仕事か。隣の業務との境目を言葉にする
- 裁量:本人が決めていいこと、院長に確認してほしいことの線を引く。金額や患者対応に関わる線は具体的に
- 期限:半年など、いったん区切る。ずっと続く前提にしない
- 報告先と場:誰に、どこで報告するのか。ミーティングの中に 3 分でいいので枠を取る
4 点目を用意していない医院が多い印象があります。報告する場がないと、本人がやったことに誰も気づかないまま時間が過ぎ、続ける理由がなくなります。
役割にしないほうがよいもの
何でも担当を割り振ればよいわけではありません。次のものは、係の形にしないほうがよいと考えています。
- 診療の安全や、感染対策の最終判断に関わること。これは院長の責任範囲に置く
- 他のスタッフの評価や、勤務時間の調整に関わること。人間関係の負担が一人にかかる
- 誰もやりたがらないので押しつけた、という形になっているもの
3 つ目は特に注意が必要です。出番をつくるための仕組みが、負担を寄せるための仕組みに変わってしまうと、逆の結果になります。
半年ごとに、いったん外す
学期で区切っていたのと同じで、医院でも期限を決めて、いったん全部外して組み直す時期をつくることをおすすめします。
本人に合わなかった担当を降りやすくなりますし、続けたい担当は本人から続けたいと言ってもらえます。 組み直すときに「この半年で何が変わったか」を短く振り返る場を持てると、次の担当の決め方も具体的になります。
役割を持っていて、頼られている実感がある職場を、人はすぐには離れない。教員時代からそう感じてきましたし、歯科の現場に移ってからも同じ印象を持っています。 ただしこれは私が見てきた範囲での実感であり、離職の理由は給与や通勤、家庭の事情など複数の要素が重なるものです。役割の設計だけで解決するものではありません。
まとめ
- 診療業務の外側に、その人が決めていい小さな担当を用意する
- 渡すときに、範囲・裁量・期限・報告先の 4 点を決める
- 報告する場をミーティングの中に取る。数分でよい
- 安全に関わる判断、評価に関わることは係にしない
- 半年で区切り、いったん外して組み直す
担当の割り振りは、スタッフの人数と、外来と訪問の回り方によって形が変わります。 院内の業務を並べて、どこを任せられるか整理するところからご一緒する形もあります。関わり方は外部事務長のページをご覧ください。
