訪問歯科
訪問歯科の施設連携で、施設が実際に見ていること
- 公開日
- 更新日
この記事の結論
施設連携が続くかどうかは、診療の内容だけでなく、連絡がつくか・報告が届くか・家族対応をどちらが持つかで決まる部分が大きいと感じています。診療体制を見直す前に、この 3 つが院内で決まっているかを確認してください。
訪問歯科の相談を受けていると、「診療自体には問題がないはずなのに、施設からの依頼が減ってきた」という話を聞くことがあります。 施設側から明確な理由が伝えられることは少なく、依頼の件数が静かに減っていく形で表面化します。
施設の担当者と話す機会に理由を伺うと、診療の中身よりも、連絡や報告のやりとりに関する話が出てくることが多いという印象があります。 施設側にも人員と時間の制約があり、そのうえで外部の事業者と組んでいるためです。 ここでは、歯科側の運用として確認できる点を並べます。
1. 「診療未満」の相談に返事ができているか
施設から来る連絡には、受診の依頼だけでなく判断に迷う段階の相談が含まれます。 「最近食事を残すようになったが、歯が原因か分からない」「義歯の調子が悪そうだが、次の訪問まで待ってよいか」といった内容です。
こうした相談に返事が返るかどうかは、施設側から見ると分かりやすい違いになります。 院長が診療中で電話に出られない状況自体は避けられないので、誰が一次対応をして、いつまでに折り返すのかを決めておくことが実務上の対応になります。
「当日中に折り返す」と決めたなら、その基準を施設側にも伝えておいてください。 返事が来る時間の見当がつくだけで、相手は次の段取りを組めます。
2. ご家族への説明を、どちらが担当するか決まっているか
治療方針の説明や同意の確認が必要な場面で、施設スタッフを介してご家族に伝えてもらう形をとると、 施設側が歯科の内容を説明する立場に置かれます。介護職の職務範囲を超える部分ですし、 伝わり方に行き違いが出たときに矢面に立つのも施設です。
歯科側からご家族へ直接連絡し、その結果を施設へ報告する形にすると、この負担は発生しません。 「本日ご家族に◯◯の件をお伝えし、同意をいただきました」と一報を入れるところまでを含めて 1 セットです。
連絡先の管理や個人情報の取り扱いは施設ごとに手順が違うため、契約や初回の打ち合わせの段階で、家族連絡をどちらが行うかを明文化しておくことをおすすめします。 始まってから変えるのは難しくなります。
3. 報告が、その場にいなかったスタッフにも届いているか
訪問時に立ち会ったスタッフと、その後にケアを担当するスタッフが同じとは限りません。 口頭の申し送りだけだと、シフトが替わった時点で情報が止まります。
診療日ごとの内容・次回の予定・家族連絡の結果を A4 一枚にまとめ、施設内の決まった場所に置いてくる形は、 訪問歯科の現場で運用しやすい方法だと考えています。開く手間がなく、誰でも同じものを見られるためです。
システムを使うかどうかは施設側の運用に合わせて決める話で、歯科側の都合で決めるものではありません。 既に施設で使っている記録の仕組みがあるなら、まずそこに合わせられるかを確認してください。
4. 言いづらい要望を拾う窓口があるか
「診療時間をもう少し短くしてほしい」「他の入居者さんが休んでいる時間帯は声量を落としてほしい」といった要望は、 担当の歯科医師に直接は伝えにくいものです。伝えられないまま溜まり、契約の見直しという形でまとめて出てくることがあります。
歯科側から定期的に聞きにいく機会をつくると、この種の要望は早い段階で出てきます。 訪問のたびに聞く必要はなく、数か月に一度、担当者に「やりにくい点はありませんか」と確認する程度で構いません。 聞く役は、診療に入っていないスタッフのほうが話してもらいやすいと感じています。
5. 連絡調整を担当する人を決める
1 から 4 までを院長一人で回すのは、診療と並行する限り無理があります。 家族への連絡、施設への報告、要望の確認を担当する人を院内に置くか、外部に委ねるかを決める必要が出てきます。
訪問件数がまだ少ない段階なら、受付や事務のスタッフが兼務する形でも回ります。 件数が増えてきたら専任にする、という順番でよいと考えています。大事なのは人数ではなく、誰の担当なのかが院内で共有されていることです。
まとめ
- 診療未満の相談について、一次対応者と折り返しの目安を決める
- ご家族への説明と同意取得を、どちらが行うか明文化する
- 報告を紙一枚にまとめ、立ち会っていないスタッフにも届く形にする
- 数か月に一度、施設の担当者に困っている点を確認する
- 連絡調整の担当者を決め、院内で共有する
どこまでを院内で持ち、どこから外に出すかは、訪問件数と人員によって変わります。 施設への報告書式や家族対応の手順を整理したい場合は、訪問歯科コンサルティングで、現在の連絡の流れを書き出すところから一緒に進めます。
