訪問歯科
新しい入れ歯を使っていない。理由は「痛い」だった
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作った入れ歯が、使われていなかった
訪問先で、新しく作った入れ歯を患者さんが使っていないことがありました。理由は「痛い」でした。
歯科側には、新しい入れ歯を入れた後も、状態を確認しながら調整していくという前提があります。
しかし、その前提が患者さんや介護する方、ご家族にも共有されているとは限りません。
私が現場で接してきた中では、「新しく作れば、最初からぴったり合って、すぐに噛めるようになる」というイメージを持たれていると感じることがあります。
そのイメージで入れ歯の完成を待っていたら、実際に使って痛かったとき、「まだ調整が必要なのだ」とは受け取りにくいのだと思います。
歯科側が当たり前に知っていることは、相手の当たり前ではない
歯科側にとって、装着後の調整は診療の流れの一部です。
一方、患者さんにとっては、何度か診療を受けて、ようやく新しい入れ歯ができたところです。そこで「完成しました」と聞けば、これで食べられると期待するのは自然なことだと思います。
この認識がずれたままだと、痛みが出た際に「せっかく作ったのに使えない」という受け止めにつながる可能性があります。
介護する方やご家族も、同じイメージを持っているかもしれません。
歯科側から見れば、調整を続ける段階。でも、周囲には、作り終えたものが使えていないように見える。この違いを、医院側が意識しておきたいところです。
調整する理由と、痛いときの対応を一緒に伝える
新しい入れ歯は、装着した時点だけでなく、その後もお口の状態や使い心地を確認して調整する必要があります。日本歯科医学会の「有床義歯の管理について」でも、装着後に検査・調整・指導を重ねることと、その必要性について患者さんの理解を得ることが示されています。日本歯科医学会「有床義歯の管理について」
ただ、「最初は痛いものです」「慣れてください」だけで済ませてしまうと、痛みを我慢して使うように聞こえるおそれがあります。
調整の必要性を説明することと、痛みを当然のものとして片付けることは、分けて考える必要があります。
たとえば、説明する際には、次の内容を一緒に伝えたいと思います。
「新しい入れ歯は、お渡しした後も、実際に使った様子を確認しながら調整していきます。痛くて使えないときは、我慢せず医院へ連絡してください。使い方や次の診療までの対応は、状態を確認してお伝えします」
必要な確認や調整の回数・間隔は、担当の歯科医師が患者さんの状態に合わせて判断します。「何回調整すれば必ず使える」と一律に約束する説明にはしません。
本人だけでなく、普段の食事に関わる人へ伝える
訪問歯科では、診療の場で説明を聞く人と、その後の食事や義歯の着脱を支える人が同じとは限りません。
ご本人に説明していても、介護する方には調整の必要性が伝わっていない。施設には伝えていても、ご家族は「もう完成した」と思っている。こうした行き違いが起こらないよう、誰に何を伝えたかも確認しておきたいと思います。
医院側でそろえておきたいのは、次の三つです。
- 作る前から、装着後も確認と調整が続くことを説明する
- お渡しする際に、次の確認予定と、痛くて使えない場合の連絡方法を伝える
- その内容を、ご本人に加えて必要な家族・介護者にも共有する
「何かあったら連絡してください」だけでは、相手が何を相談してよいか迷うことがあります。
「痛くて食事に使えていないことも、教えてください」と、知りたい生活の場面まで伝える。そうすると、医院が確認したいことを共有しやすくなると考えています。
まとめ:渡した後の流れまで、医院から説明する
新しく作った入れ歯を使っていないとき、「なぜ使わないのか」を確かめる必要があります。今回の理由は、痛みでした。
そこで振り返りたいのは、作った後にも診療が続くことが、患者さんと周囲の方に伝わっていたかという点です。
医院の中では当たり前になっている調整も、初めて聞く方には分かりません。
まずは、新しい入れ歯をお渡しするときの説明を振り返る。調整が続くこと、次の確認予定、痛くて使えないときの連絡方法。この三つを、患者さん・家族・介護側と共有できているかを確認したいと思います。
出典
診療報酬の点数や施設基準の要件は改定で変わります。実務にあたっては、 厚生労働省および地方厚生(支)局が公表している最新の告示・通知をご確認ください。
